NO.0021 2005.02.02発行

《 ワークショップから・・・ 》

庄田武之です。

不器用の事・・・

私はとても不器用です。
私がこの様に言うと、お客様には大変失礼な事なのかも知れませんし又は謙遜している様にも思われるかもしれないのですが本当の事なのです。

家人からは、これ程不器用なのに何故今の仕事を続けていられるのか不思議がられているほどです。

厨房に立ち、包丁を握らせれば少なからず怪我をしますし、煮炊きをすれば火傷、家の何かを修理し始めると、むしろ壊してしまったり、やはり怪我をしたりします。

何時もそんな危険を十分に秘めていると、非難めいた事を言われております。だったら何も頼まなければ良いのにと思うのですが、何かしら起こると直ぐに私にお鉢が回ってきます。(もっとも、他にやる人間がいないが為ですが)

ところが仕事となると突然器用になる・・・なんて事はありません。やはり不器用なのです。 ですから、何時も必死になって仕事をしなければなりません。

それはもう大変な努力であります。
必ずある方向に歪む傾向にある手の動きをしているらしいので、意識的にそれを補正しながら仕上げていかなくてはなりません。

職人には少なからず一定の手の動きの癖がありますから、その癖を自分で知る事が大切です。
ところがあまり沢山癖があるので知れば知るほど補正の必要が出てきてしまい、普通のアプローチの仕方とは違った方向になる事があります。 
という訳で仕事の流れはとても独特なものになってきます。

勢い、出来上がる作品も普通では作らない方向のものも数多くあります。
勿論、基本的なフォルムはベーシックなものなのですがその成り立ちは少なからず平均的な造りではありません。

今回のエメラルドのリングのデザインなど、良い例だと思います。
石をセットする爪の部分は四隅に一箇所づつ、そしてそれが指輪の上に乗っている形がベーシックな形ですから、その形状はそのままになっています。

しかし、それぞれが独立せず一つの流れの中に一緒になっています。
セッティング用の爪は指輪の一部であり、指輪は石枠でもあり爪にもなっているという事です。

この流れという物があらゆるデザインにとって重要な事だと思っています。
この流れをスムーズに見せる事が、不器用さをそれと感じさせない秘訣だと思うからです。

あるいは、不器用さを補う努力の後を窺がわせない方法と思っています。

このデザイン上の流れについては次回またお話したいと思っております。

今回の作品→http://www.shoda-jewels.co.jp/imgs/N0347.jpg