NO.0008 2003.10.01発行

《 ワークショップから・・・ 》
庄田武之です。

一月ぶりにワークショップからのお便りですが、その間に厳しい残暑も過ぎ突然のように秋めいてきましたが皆様お変わりないでしょうか。

何時もワークショップの中ではお客様からの御注文をこなす傍ら、自分の作品を何とかして生み出そうと努力する毎日ですが、ある時突然に何を作ったら良いのか皆目見当がつかなくなるときがあります。 仕事をすればするほど焦りだし、いたずらにデザインをする事は無意味なのじゃなかろうか?・・・
などと考え始めます。

実は(ご存知とは思いますが)無意味なものなどないのです。 
少し仕事から頭をはずして、自分の気に入ったもののことなど考えてみます。

突然ですが皆さんは1927年に公開されたフリッツ・ラング監督の「メトロポリス」と言う映画をご存知でしょうか? 私はこの映画が大好きで、かなり影響を受けた事が有ります。 無声映画ですし、内容も今となっては目新しいものではないのですが画面に出てくるあらゆる物のデザインが非常に優れていて、とりわけ「ロボットのマリア」はため息が出るほど好きなデザインなので、その5分の1程の人形を手に入れ飾っていたのですが家人に気味悪がられ、今は何処かに仕舞い込まれています。

これは1920年代のものですから、所謂アールデコと言う事に成ります。
とは言っても特別アールヌーボー、アールデコが好きという訳でもないのです。
勿論そのデザインには深く感銘を受けますが。・・・
やはり、確か同時期のガラス器や宝飾品のデザイナーのルネ・ラリックを皆さんもご存知と思いますが、その展覧会を何度か見に行った事があります。
そして大変感銘を受けたのですが、それはラリックのデザインに対してでもありましたがそれにもまして当時の職人たちのすごさに対してでした。

詰まりはそういう事です。 あらゆるデザインは、優れた作り手によってのみ優れた作品になる可能性を持っています。 そのデザインの持つ優れた感性を表現しようとする情熱と並はずれた腕を持った職人(作り手)が当時は十分に存在していたのだろうと思います。
それを目の当たりにすると、名も無い彼らがひたすら仕事に打ち込んでいる姿が思い浮かばれて、切なくなるほどです。
今現在、そういった職人たちが存在しているか否かの議論はしませんが、少なくとも少数派になっていることだけは確かだと思われます。

自分のデザインを作る為に最適な作り手は、やはり自分自身だろうと、なんとなく納得したところでそろそろ作りたいものが見えてきたりするものです。

そんな訳で次号では、そこから作り始めたものを少しご紹介できるかもしれません。
何時もの事で、遅れるかもしれないので期待せずにお待ちください。