NO.0005 2003.08.06発行

《 ワークショップから・・・ 》

皆さん、こんにちは 庄田 武之です。

やっと梅雨も明けて、夏らしくなりました。 一足早い夏休みを子供たちと過ごしましたが、雨が降ったり、曇りがちの天気にもかかわらず結構楽しめました。
夏休みになると、少なくとも一度は家族で旅行をするのが恒例のようになって随分経ちますが、私の子供の頃の夏休みには、そういう事はほとんどありませんでした。
曇り空を眺めながら、今の子供たちにとって夏休みは一体どんなものなのだろうと考えてしまいました。

子供の頃、長い休み(殊に夏休み)になると、兄弟たちの中で私だけは、なぜか一人、祖父母の大船にあった隠居所ですごしていました。 なぜ私一人だけだったのかは特に思い出せませんがともかく休みの間中ずっとそこで過ごしていました。 
祖父母は、特に私の面倒を見るわけでもなく、食事や生活に必要な事だけをしていてくれたので毎日、自由に好き勝手な事ばかりしていました。

毎日毎日、空の雲を眺めたり、池に船や潜水艦を浮かべたり、自転車に乗ってそこら中走り回るような事をしていましたが、さすがに一人でいる事に飽きがきてしまい、祖父におもちゃの船を作ってほしいとせがんだ事がありました。

祖父は、元漁師で、どうひいきめに見ても器用とは言えない人だったので「そんなもん、出来んぞ。」と言いながらも、孫にせがまれたので仕方ないと思ったらしく、のこで木を切り出し、ビール瓶のふたやら、木っ端やらを五寸釘などで打ち付けたりしていました。

出来上がった船と言えば、どうやら船に見えるかなと言った代物で、その上水に浮かべると横倒しになってしまうものでした。祖父は苦笑いをするだけで、やはりうまく出来なかったと思ったらしいのですが、しかし私にとって、後にも先にも、このおじいちゃんの船ほど素敵なおもちゃを手にしたことはありませんでした。

誰かに、何かを作る時、その出来栄えなどは殆ど意味を持たない事があります。
私が、たとえお客様の注文のものでさえ、加工をする時にはどうしてもその完成度にかなり注意しています。 しかし、本当に大切な事は、もっと他にあると言う事をおじいちゃんの船は、いつも思い出させてくれています。

祖父も、おじいちゃんの船も今はもう有りませんが、何時の日にか、これが私の船ですと言える日を目指して作品作りを続けていくと思います。 

もうすぐ立秋ですが、短そうな夏を楽しんでください。